TOTOにとって30年の歴史で、全米チャート1位を獲得したのは”Africa”1曲(“Rosanna”は5週連続2位と不運)で、ホール&オーツやポリスなどと比べれば記録的には見劣りするところがあります。
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それでも、TOTOはエレキギターと鍵盤系(ピアノ、キーボード、シンセサイザー等)の調和、そしてホーンセクション、パーカッションに至るまでの繊細な音作りでロックの概念を根底から覆し、”サタデー・ナイト・フィーバー”(77年)から続いたディスコ・ミュージック主導から、再びロックに引き戻したという事で、80年代の音楽シーンに多大な影響を与えたと思います。
また、メジャー・デビューした後も、セッションやレコーディングに引っ張りだこで、あらゆるジャンルのアーティストのサポートをしました。シカゴ、ホール&オーツ、エルトン・ジョン、ジャクソン・ブラウン、アース、ウィンド&ファイヤー、ライオネル・リッチー、チャカ・カーン、ダイアナ・ロス、ハービー・ハンコック、そしてクインシー・ジョーンズそしてマイケル・ジャクソン。もう本当に、半端ではありません。
ちなみに、小田和正さんや河合奈保子さん(!)など、多くの日本人アーティストにも関与しています。
ライバルにも自らの腕前を提供し、音楽シーンの屋台骨を支え、影響を与えていったのですね。
マイケル・ジャクソンの「オフ・ザ・ウォール」には、スティーブ・ポーカロが、”ガールフレンド”と”それが恋だから(It’s The Falling In Love)”の2曲でシンセサイザーを演奏し、また、ここでの共演が縁でTOTOの最終メンバーに入ったグレッグ・フィリンゲインズ(Key)は、その後「BAD」に至るまでほとんど全曲に関与しています。
「スリラー」では、これに加えデビッド・ペイチ、ジェフ・ポーカロ、スティーヴ・ルカサーも参加し、ほとんど総出状態で関与しています。ちなみに”今夜はビートイット”のギターソロは、エディ・ヴァン・ヘイレンがプレイしましたが、それ以外のリードギターはスティーヴ・ルカサーです。ルークも、ギタリストの間ではヴァン・ヘイレンに負けない位リスペクトされているプレイヤーなので、これは夢の共演だったと聞きます。”ヒューマン・ネイチャー”はスティーヴ・ポーカロの作品で、演奏がTOTOで、視点を変えれば、ほとんどTOTOのリードヴォーカルがマイケル・ジャクソンみたいな状態で、これまた夢のようなカップリングだったのです。
それにしても、自らの活動があるのに、何でこれだけのアーティストをサポート出来るのでしょうか?
TOTOのメンバーは、ほとんど、レコーディングを一発録音で完了してしまうほど精密な演奏能力だったのだそうです。それだけではないと思いますが、とにかく信じられない仕事人集団だったのですね。
「スリラー」においては、9曲を選び出す為に、600曲のスコアが作られた訳ですが、片っ端からデモに仕上げたりアレンジしたりするのに、彼らのスピードとスキルが必要だったのだと思います。
92年にはバンドの支柱的存在であったジェフ・ポーカロが自宅で殺虫剤散布中に中毒死するというショッキングな出来事がありました。時代は移り、音楽シーンは変わりましたが、TOTOはその後も変わらず、エレガントなロックを奏で続けました。06年の「フォーリング・イン・ビトウィーン」というアルバムまで、比較的コンスタントに活動を続け、そして今年08年、結成のきっかけとなったボズ・スキャッグスとの共同ライブで幕を閉じました。
寂しいですが、TOTOという1つのバンドとしては、天命を全うしたのかなと思います。

 

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