10月25日、映画「ブロードウェイ♪ブロードウェイ コーラスラインにかける夢」公開初日上映に行ってきました。

「コーラスライン」は、僕の人生にとても大きな影響を与えたミュージカルです。



「ウエストサイド物語」への出演から振付師となり、7つのトニー賞を獲得した、マイケル・ベネットの代表的ミュージカル作品です(マイケル・ベネットは87年、エイズで死去しています)。

 

ストーリーは、あるミュージカルのバックダンサーのオーディションで競う19人が、1人づつ演出家(=観客)と対面になって、自分自身の事について告白してゆく、人間模様を描いた物語です。生い立ち、生活苦、堕落、ハンデキャップ、整形、ゲイ・・・それぞれが抱える苦悩の告白と、それでも強く生きてゆく様が人々に共感を与え、ブロードウェイ・ミュージカル中の最高傑作の1つになっています。

 

85年に映画化された「コーラスライン」を見たことが、僕が本格的にダンスを習い、エンターテイナーを目指すきっかけになりました。

マイケル・ジャクソンに出会いくすぶっていたものを、この作品は後押ししてくれました。

 

大学に入るなり、親に猛反対されながら、卒業までの間を猶予期間として、最初から一番レベルが高く、業界に力のある所に入門しました。

素人なのにプロのダンサーに混じって毎日レッスン。最初の半年間は恥のかきっぱなしでしたが、実際にその世界に足を踏み入れると、レッスンに通う日々、師匠や仲間との関係、オーディション、
ステージ・・・すべては「コーラスライン」そのものでした。そこには、普通の生活では得がたい緊張感と期待感、そして人間模様がありました。

1年半経って、師匠が初めての仕事のチャンスをくれました。1ヶ月間のミュージカルのバックダンサーです。前期試験ともろバッティングだったところ、親を説得しました。

本当に、親不孝ですね。

その後の半年間は舞台とオーディションの日々でした。
ダンスを極めるか、ミュージカルに進出するか。進路に悩んだ末、「コーラスライン」をやるために劇団四季の練習生になる決断をしました。その矢先。
正月休み、大学の友人の運転する車に同乗中、信号無視の車が衝突しました。友人の親父の高級外車が廃車になる程強烈な事故で、首を痛めてしまいました。
親の反対を押して、体にリスクまで負って、迷いに迷ったが・・・続けられない・・・僕はその道をあきらめました。


就職が決まった90年2月、大学の卒業旅行でニューヨークに行って、ブロードウェイ・ミュージカルを初めて見てきました。歴史的な名作も数多くロングランを続けていて、「キャッツ」、「オペラ座の怪人」や、ハーレムまで行って「ママ・アイ・ウォント・トゥ・シング」も見ました。そしてもちろん、お目当ては「コーラスライン」です。


”Again,turn,turn,right,left,touch,kick,again・・・・5・6・7・8~”


最初から最後まで涙が止まりませんでした。


愛した日々に悔いはない。本場ブロードウェイで見た「コーラスライン」は、熱く燃えた日々を思い起こさせ、今後の人生を奮起させてくれました。


「コーラスライン」はその年の4月に、当時のブロードウェイ最長ロングラン記録を立てて終幕しました。



ということで前置き長すぎ(笑)


それから16年後の2006年に、「コーラスライン」は再びブロードウェイに帰ってきました。この映画「ブロードウェイ♪ブロードウェイ コーラスラインにかける夢」は、「コーラスライン」の誕生秘話と、今回の再演オーディションの模様をドキュメンタリー・タッチで描いた作品です。そもそもがオーディションを描いた舞台なので、それに出るためのオーディションを取材した映画と若干ややこしいですが、「アメリカン・アイドル」などオーディション系のリアリティ番組が大人気なのもこの映画公開の背景にあるでしょう。


舞台や映画で「コーラスライン」を見たことがない人も、この役はどんなキャラで、どんな人が適任なのか、追ってゆけるので、ある意味「コーラスライン」の物語の別バージョンとして楽しめると思います。

 

オープニングは、やっぱりジーンと涙があふれました。

Opening


「コーラスライン」のキャストは、既に人種とパーソナリティがほとんど決まっている為、どんなにうまかろうが、そのキャラに適合してなければオーディションを通過出来ません。



アジア系のキャストもあります。中国系女性のコニー役です。

身長147cmとうハンデをものともせず、目いっぱい体を使って表現するのがコニーの特徴です。
この役の獲得をめぐり、最終選考まで残ったのが沖縄出身の高良結香さん。

同じ日本人として大変誇らしいです。

今回の再演版での振付ディレクターが、コニーのキャラクターのベースとなったダンサーで、初演版コニー役を演じたバイヨーク・リーさんということもあり、コニー役を巡るドラマはひときわ露出度が高かったので更に満足です。
日本のアニメから飛び出してきたような結香さんの快活な演技は、新しいコニーにピッタシ!と思うのですが、なかなかリーさんの墨付きがでません。

果たして結香さんはコニー役をゲットできたのでしょうか?



僕がもっと長く続けていたら、絶対にこれをやりたかった!

 I Can Do
That

ちょっと妙な吹き替え入ってますが・・・

 

マイク役の演技は、高いテクニックが要求される見せ場のひとつで、有名なダンサー同士がこの役をゲットする為に熾烈な争いを展開します。



オーディションというと、「スター誕生」(日本のアイドル発掘番組の方です)のように、一発勝負で、生放送で声がひっくり返ってしまったらもうアウトみたいなイメージですが、本物のオーディションは、もっとヒューマンで、可能性がある人に関しては、いろいろな角度から人間性を含めて試されます。オーディションに限らず、ビジネスや人間関係でもそうではないでしょうか。「このオーディションの結果がどうであれ人生は続く。」マイク役を争う1人のダンサーのインタビューに痛く共感しました。


85年の映画版「コーラスライン」で衝撃的だったのがグレッグ・バージが演じたリッチー役です。グレッグは当時紛れもないNo.1ダンサーでした(彼が出演したデューク・エリントン・オーケストラの楽曲を踊る「ソフィスティスティケイテッド・レディーズ」というミュージカルも最高でした!)。彼は残念ながら98年に亡くなっています。
映画では彼の見せ場を作る為、特別に”サプライズ・サプライズ”という曲が作られました。
Surprise


グレッグの体の動かし方、リズム、グルーヴ感すべてが芸術的で、当時何回もこの”サプライズ・サプライズ”での彼の動きをビデオで見て研究したものです。

今回このリッチー役について、一瞬も触れられていないのがとても残念でした(リッチーらしきキャストは、ラストの”One“で全員が踊る時にだけ出現します)。
それだけ、リッチーというキャラクターではなくグレッグ本人のパフォーマンスが際立っていたということなのでしょう。

 

少し話がそれてしまいましたが・・・

 

3,000人から最終選考に残った人たちは、やはりみな光り輝いていました。

素材が際立っていてオリジナルの人種設定を覆したり、期待以上の演技力に選考者一同が号泣してしまったり、そのオーラに演出家が一目惚れして、「秒殺」で当選確定してしまったり。見どころは満載です。

 

最近ブロードウェイもストライキが起こったり、ビジネスの成立が大変難しいようです。

そうした背景もあり、2006年10月に始まった再演は、2008年8月には閉幕しています。

 

それでも、「コーラスライン」がこれからの人生にも感動と勇気を与え続けてくれる事を改めて確認できて、とてもよかったです。


やっぱり最後まで涙でした。

「もし、今日からダンスが出来なくなったら、あなたはどう思いますか?」
演出家はダンサー全員に聞きます。


What I Did For
Love
”(愛した日々に悔いはない)

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